6年ぶりのケーキ

東京から新幹線「のぞみ」で西へホームに降り立ったと同時に、娘からメールが届きました。

「お母さん何時にくるの?」可愛い絵文字の入ったメールでした。

「うん、昼過ぎかな」


そうはいったもの子供達の住む家の最寄り駅に到着したのは3時を過ぎていました。

後、必要なのはバターと牛乳、そしてケーキ型にしく紙・・でした。


夕食用に皆で囲めるようにすき焼きの材料もそろえ、自分の荷物と買い物袋2つとそれから傘。蛸か、イカかそれとも千手観音様になりたいとよたよたしながら家に向かいました。


私、本とは頚椎症で肩と首が痛いのです。

寄り道をしていた結果です。雨がぽつぽつと降り風も少しありました。


近くのスーパーへ行き、ケーキの材料を買いました。卵10個、砂糖1キログラム、小麦粉500グラム、生クリーム、そしてトッピング用の果物の缶詰め。。

重いものを長時間持ってはいけないのです。


それなのに、それなのに荷物の重みが嬉しくて、よろよろが楽しくて・・・途中の曲がり角で果物売りのおじさんを見つけた時には、さらに柿やみかんに手が伸びそうになりました。


どの手で持つんじゃ・・・そうそうそうだね。


家につき「おじゃまします」と上がらせてもらいました。


荷物と買い物袋を片付けながら、これは6年前の私が毎日していた事。

自分の体に染み付いた一連の作業を改めて思い起こす瞬間でした。

「お母さん久しぶりにケーキ焼くからね。分量とか忘れてしまっているよ。」
そういうと、末娘がさっさか秤を取り出し、テーブルにケーキの材料を並べはじめました。

材料は、もって行くよと言ってましたが、そろえてあったのです。


そういえば、高校生の頃はお菓子作りのクラブに入り、随分本格的にお菓子を作っていたようです。


「○○がつくるよ」娘は、手際もよく、チラシで作った四角い箱に小麦粉と砂糖を入れ計っていました。


型に紙を敷き詰め、卵は、白身と黄身にきちんと分けて。。

バターは牛乳を入れて、電子レンジでチン・・・


スポンジケーキの作り方は、ごまんとあります。

でも、そのひとつひとつは私が、子供達の為に作っていたやり方そのままでした。

チラシの箱で粉と砂糖を計る作業もそのまま。


私は、そんな娘の姿を見て出てくる涙を隠すのに必死でした。

行きたくもないお手洗いに何度も行き、大して洗う必要のない手を洗面所に行き洗うふりをしました。


見ていたんですね。ずっと・・・


私のエプロンの裾を引っ張りながら、粉を撒き散らしながら・・。

母親がつくるケーキの手順のひとつひとつを、きっとじーっと見ていたのでしょう。


出来た種をオーブンにいれ、今度は生クリームを泡立てはじめました。

「今日は紅茶風味にするんだ」そういって鍋に生クリームを入れティーパックを入れました。


「へえ〜紅茶風味ねえ。」

少し煮出した後、砂糖入れ氷で冷ましながら、再びハンドミキサーで泡立て始めました。


「う〜〜ん。ちょっと甘みが足りないかなあ」とか言うものだから「どれどれ」とハンドミキサーについたクリームを私はぺろりと味見させてもらいました。


「うん、大丈夫、おいしい」これじゃあ逆じゃん。

そう思いながらも私は、なんとなく嬉しく誇らしく、私の身長をとうに追い越した幼い娘の横顔を見ていました。


最後に、生クリームがべったりついたハンドミキサーのくるくる部分をぽんと取り出し「はい、おねえちゃん」と渡していました。


これね。二つしかないくるくるを4人の子が順番でなめあっていたんです。


お行儀悪いなんてちっとも思いませんでした。

全てが、そのまま同じ・・・


こんな事があるんですね。


きれいに焼けたスポンジがさめるの待ちながら、わざわざ来てくれた息子も一緒に、4人の子供たちとすき焼きを食べました。


質より量で選んだお肉です。

「ちょっと硬かったね、ごめん」「全然大丈夫、おいしいから」


みんな少し静かでしたが、大きな鍋で作ったすき焼きは、あっさりと子供達の胃袋へ消えていきました。


出来上がったケーキは、肌色に近い茶色の生クリームの上に黄色のみかんがのり、「金粉かけようか」と思い切りドレスアップしていました。

「生クリームがちょっとやわらかかったね」


そういいながら食べる20歳の娘が作ったケーキ。

作ってあげるつもりが作ってもらった20歳のケーキ。

私には、涙味付きの忘れられないものになりました。


ホテルはキャンセルにしてうちに泊まっていいよ。

申し出をありがたく受け、とめてもらうことにしました。


当然布団などなく毛布1枚でぐるぐる巻きになり床に就きました。

あまりにも寒いので途中で着てきたジャンバーを着て、さらに毛布をぐるぐる巻きにしました。
一日の出来事が次々と現れ神経が高ぶって眠れませんでした。


これからの1週間をどう乗り切るか、最初の山がすぐそこに迫り容赦なく私を威嚇してきました。


「間違ってはいないはず、決して」


しんと静まり返った暗闇に解けてしまいそうになりながらまんじりとしない夜をすごしました。

追記随分とお騒がせしまって大変もうしわけありません。

いろんなことがあり、逃げ出してしまいました。

でも、私はブログを書くことが大好きなんだということを改めて知りました。


いろんな方のお知恵と励ましをいただきました。


「書きたいから書く」「読みたいから読む」随分シンプルな答えを見失いそうになっていました。

ご迷惑をおかけしたにもかかわらず、エールを送ってくださった借金クイーン様に心からありがとうございました。


追記2

ケーキの話はどうしても残しておきたかったです。読んでくださってありがとうございました。